「渋沢栄一ベンチャードリーム賞」チャレンジ賞に
渋沢栄一の起業家精神を受け継ぐベンチャー企業を表彰する「渋沢栄一ベンチャードリーム賞」の第5回表彰があり、この中のチャレンジ賞に “
ヒラソルバイオ”の大村馨代表が選ばれた。
同社は、もともとは『科学技術振興機構(JST)大学発ベンチャー創出推進事業』として、あらゆる有機分子を固定化するバイオチップの開発に取り組んできており、2007年度のJST『革新的ベンチャー活用開発』に採択され、“食物アレルギーの原因物質となるペプチド(タンパク質の断片)を特定”する診断チップの開発に成功している。
受賞に際し、”
Sankei-Biz”のインタビューに答えた内容に注目すべきものがあったので、以下引用して紹介する。
開発の経緯は…
今回、この固定化技術をベースにタンパク質チップ用固定化剤を開発・製品化。これを進化させてアレルギー診断用ペプチドマイクロアレイを開発したもので、同氏は、「
世の中にない世界トップレベルのものを実用化したので『埼玉発世界初』と呼んでいる」といい、鼻息はかなり荒いよう。
開発に取り組んだ狙いについて同氏は、
「食物アレルギーは乳幼児の1割がかかるといわれる。その治療法は、例えば卵アレルギーの場合、今は卵を全部除去する食事制限が一般的。われわれの技術では、卵の中のどういったものにアレルギーを起こすのかが分かるので、生はダメだが加熱すればいいとか対応できる調理法を採用すれば食べられるようになる。将来はアレルギー源(ペプチド)を少しずつ与えていく免疫療法で治療させていくことも考えている。」
といい、正に世界的な課題に取り組み、新しい解決策を見出そうとしているわけで、この先の成果に大いに期待がかかる。
しかし、実際直面する問題として、
「診断も治療もわれわれの体力では無理。人的にも金銭的にもどこかの民間企業と提携していく必要がある」
といい、いま提携先を募集中とのこと。
起業を目指す後輩へのメッセージ
また、起業を目指す後輩へのメッセージを求められた同氏は、
「起業時は経済的に不安定なので、固定費をどれだけ絞るかが大事だ。JST卒業(起業)時に、ファンドに夢と可能性を訴えて資金を集めるのもひとつの方法だが、実力以上の資金が集まって失敗したときどうするのかが問題。私は実力以上に資金を集めることが好きではなかったので、固定費を押さえ込むことにした。正社員は一人もいないし、開発、製造は委託で可能。一方で開発費は公的資金で確保するのが一番いい」
という。そして
「ベンチャー経営は厳しいので、『なんとなくやってみたい』では成功しない。使命感に加え、経済的バックをどうするかをはっきりさせてから起業すべきだ」
とし、身の丈にあった起業を勧める。