セキュア・バンク株式会社は、Open Weightモデルを基盤とした「国産Cyber AI」の研究開発を開始しました。海外AIへの依存や情報管理上の課題を見据え、国内環境で安全に運用できるサイバーセキュリティAIの実現を目指します。LoRAによる追加学習やHarnessによる自律的な推論・再試行、CyberGymを活用した性能評価などを通じて、AIによる脆弱性探索・攻撃シミュレーション技術の研究を進めます。
プセキュア・バンク株式会社(本社:東京都、以下「SecureBank」)は、2026年8月19日、Open Weightモデルを基盤としたサイバーセキュリティ領域特化型AI「Cyber AI」の独自研究開発を開始したことをお知らせします。
本研究では、特定の海外AIサービスや特定企業の技術だけに依存することなく、公開されているOpen Weightモデルを活用しながら、日本側でCyber Dataset、教師データ、追加学習、Harness、Tool、RAG、評価基盤等を構築し、Cyber AIを継続的に育成できる仕組みの確立を目指します。
研究開発の初期段階では、大規模なGPU基盤や専任の大規模AI開発チームを先行整備せず、一般的なWindows PCを用いた小規模・低コスト環境から検証を開始しています。
これまでに、公開脆弱性情報からの教師データ生成、Open WeightモデルへのLoRA追加学習、独自HarnessによるLLM制御、CyberGymを利用した実技型評価、実験ログの構造化保存までの基礎パイプラインを構築しました。
なお、現時点で確認しているのは、Cyber AIを学習・評価するための一連の研究開発基盤が動作することまでであり、追加学習によるサイバーセキュリティ能力の向上を確認したものではありません。
【一般的なWindows PCから研究開発を開始】
初期検証に使用している主な環境は以下の通りです。
・OS:Windows 11
・CPU:AMD Ryzen 5 PRO 7530U
・メモリ:16GB
・専用GPU:なし
SecureBankでは、最初から巨大なモデルを扱うのではなく、
小型Open Weightモデル
→ Dataset生成
→ 追加学習
→ 評価
→ 改善
→ 必要に応じたモデル大型化
という段階的なアプローチを採用しています。
【公開CVE情報から100件の教師データを生成】
初期検証では、CISAが公開しているCVE関連情報20件をPythonで取得し、Open Weightモデルを利用して1件のCVE情報から5件の教材候補を生成しました。
これにより合計100件の教師データを生成し、
公開情報の取得
→ 教材候補生成
→ 教師データ化
→ 追加学習
という初期的なデータ生成パイプラインを構築しました。
【約4.95億パラメータのQwen2.5-0.5BへLoRA追加学習】
生成した100件の教師データを用いて、Qwen2.5-0.5Bを対象としたLoRAによる追加学習を実施しました。
元モデルのパラメータ数は494,573,440、LoRAで学習対象としたパラメータ数は540,672で、全体の約0.11%に相当します。
今回の追加学習は専用GPUを使用せずCPU環境のみで実施し、約20分38秒で学習工程を完了しました。
これにより、
公開情報
→ 教師データ生成
→ Open Weightモデル
→ LoRA追加学習
→ 学習完了
までの一連の工程を、一般的なPC環境から実行できることを確認しました。
【CyberGymによる実技型評価環境を構築】
Cyber AIの性能を客観的に評価するため、CyberGymを用いたローカル評価環境を構築しました。
初期検証として1つのタスクを対象に、
問題データ取得
→ タスク生成
→ PoC生成
→ 実行
→ 脆弱版・修正版での検証
→ 判定
までのEnd-to-End評価パイプラインを自社PC上で実行し、評価環境が正常に機能することを確認しました。
これはCyber AIの高い性能を確認したものではなく、今後モデルの能力を客観的に測定するための実技型評価環境が動作することを確認したものです。
【LLMを制御する独自Harnessを開発】
Pythonによる独自Harnessを開発し、
問題・ソースコードをLLMへ入力
→ 回答を取得
→ 出力形式を検証
→ 不正な出力を検知
→ フィードバック
→ Retry
→ PoC生成
→ CyberGymへ提出
→ 成功・失敗判定
→ ログ保存
までを自動的に制御する基礎機能を実装しました。
初期検証では、Base Modelが1回目の試行で正しいPoC形式を出力できなかったケースに対し、Harnessがその出力を検知して提出を停止し、自動的にフィードバックを与えて再試行しました。その結果、2回目にPoC候補が生成され、CyberGymによる評価まで処理を進められることを確認しました。
【Base ModelとLoRA追加学習モデルを同一条件で初期比較】
Qwen2.5-0.5BのBase Modelと、100件の教師データによってLoRA追加学習したモデルを、同一のCyberGymタスク・同一Harnessの条件で実行しました。
今回の1タスクによる初期検証では、両モデルとも1回目は出力形式の問題により提出には至らず、HarnessによるRetry後の2回目にPoC候補を生成し、CyberGymによる評価まで処理を進めました。
この1タスクの結果からは、Base Modelと追加学習モデルの間に明確な性能差は確認されていません。
今後は評価タスクを増やし、成功率、試行回数、出力精度、失敗パターン等を比較することで、性能変化を客観的に検証していきます。
【「学習→評価→改善」を繰り返すCyber AI育成基盤へ】
SecureBankが目指しているのは、特定のモデルを一度作って完成させることではありません。
Cyber AIを構成する要素を、
・Cyber LLM:脳
・Harness:司令塔
・Tool:手足
・RAG:外部知識
・Cyber Dataset:学習材料
・CyberGym:実技試験
・実行ログ:次の学習材料
と捉え、
CyberGymで失敗
→ 失敗原因を分析
→ Datasetへ反映
→ 再学習
→ CyberGymで再評価
というサイクルを繰り返すことで、Cyber AIを継続的に改善する研究開発基盤へ発展させていきます。
【今後の展開】
今後SecureBankでは、CyberGymおよび独自Harnessによる評価対象を複数タスクへ拡大し、Base Modelと追加学習モデルを同一条件で継続的に比較します。
単一タスクの成功・失敗ではなく、複数の課題における成功率、試行回数、出力内容、失敗原因等を記録し、Datasetや追加学習が実際のサイバーセキュリティ能力にどのような変化を与えるのかを検証します。
評価によって性能改善が客観的に確認された場合には、その結果について今後公表していく予定です。
【本プロジェクトにおける「国産Cyber AI」の考え方】
本プロジェクトにおける「国産Cyber AI」は、基盤となる大規模言語モデルをゼロから国内で事前学習することを意味するものではありません。
公開されているOpen Weightモデルを基盤としながら、日本側でCyber Dataset、教師データ、追加学習、Harness、Tool、RAG、評価基盤等を構築・蓄積し、サイバーセキュリティ領域に特化したAIを継続的に育成できる技術基盤の確立を目指す取り組みです。
【セキュア・バンク株式会社について】
セキュア・バンク株式会社は、日本エンタープライズ株式会社のグループ会社として、サイバーセキュリティ領域における各種サービス・技術開発に取り組んでいます。
公式サイト:
https://securebank.co.jp/
本プレスリリース:
https://securebank.co.jp/news/cyber-ai-rd-20260819
提供元:
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