■原子力基本法の改正が核武装につながる?
2012年6月20日に成立した「
原子力基本法」の改正に「
わが国の安全保障に資する」と言う部分が追加されたことを問題視する論調が増えている。
この改正による各社の社説などは以下のようになっている。
読売新聞:「核燃料サイクル/エネルギー戦略の重要な柱」
朝日新聞:「原子力基本法―「安全保障」は不信招く」
毎日新聞:「原子力基本法 「安全保障目的」は不要」
東京新聞:「「安全保障」追加 平和の理念ゆがめるな」
産経新聞:「原子力基本法 「安全保障」明記は当然だ」
まず、注目したいのは原子力基本法の
「第二条」の存在である。
(基本方針)
第二条 原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。
朝日新聞ではこの部分の記述があることを伝えながら、今回の改正が国際的な不信感を招くと主張している。朝日新聞の「国際的」「不信感を持つ国」というのはあの3国だろうか。
毎日新聞では国会における藤村修官房長官の
「平和利用の原則は揺るがず、軍事転用の考えは一切ない」
問う言葉を引用しているが、それならば、「
安全保障」などという文言は必要ないとしている。
東京新聞は、「
安全保障に資する」と言う表現があいまいであり、その目的がテロ防止であるなら「
安全措置」でいいではないかと主張している。
産経新聞では「
安全保障」の明記は当然であり、「
第二条」の存在があるのだから、核武装論まで飛躍すのはおかしいと主張している。
読売新聞はエネルギー問題の切り口で論じており「
安全保障」には触れていない。
■日本の核武装について
今回の原子力基本法の改正が、核武装への道を開いたのかどうか?
結局「法」はその解釈と運用次第でどうにでもなる。「
安全保障に資する」というあいまいな言葉である点も問題と言えば問題かもしれない。
そもそも、核武装とは、単に核爆発する物体を持つことではない。それならば、
福島第一原発は「核兵器」だ。攻撃にあったのは自国民であるが。
日本が核兵器の開発をするならば、その人材の育成から開始する必要がある。ウランの濃縮度からして核兵器と原発では全く異なる。そして、そのノウハウ、研究を日本はしてない。
また、プルトニウムを利用した兵器も同じだ。研究すらしていない。
そして、爆発する物質「核爆弾」を作ったとしてどのように運搬するのか?また、その運用体制をどのように構築するのか?
アメリカが簡単に技術供与するわけがないのである。核兵器を持つ国は少ない方がアメリカの国益にかなっている。
日本の一部に核武装をしたいという願望はあるのかもしれない。その願望が今回の「原子力基本法」の改正に出たのかもしれない。
しかし、そもそもそう簡単に核武装など出来るわけがないのである。技術的な問題、国民のコンセンサス、国際的な損得勘定、ハードルがあまりに多すぎる。
今回の改正は大騒ぎするような話ではない。
日本は平和利用の原発すらまともに運用できるかどうか?と言うレベルである。この問題を解決できないで核兵器もへったくれもあったものでない。
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naka773】
原子力基本法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S30/S30HO186.html朝日新聞デジタル:原子力基本法―「安全保障」は不信招く - ニュース
http://www.asahi.com/news/intro/TKY201206210761.html社説:原子力基本法 「安全保障目的」は不要- 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/opinion/news東京新聞:「安全保障」追加 平和の理念ゆがめるな:社説・コラム(TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial読売/12.06.23/社説/核燃料サイクル/エネルギー戦略の重要な柱/その1
http://www.gns.ne.jp/eng/g-ken/doukan/agr_962.htm【主張】原子力基本法 「安全保障」明記は当然だ+(1/2ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120624