金属加工技術を使って、デジタルカメラの水中ハウジングブランドを立ち上げた中小企業の挑戦
100年に一度の不況と言われる世の中だが、いつまでも「不況だから」を言い訳にしていても仕方が無い。「モノ作り大国ニッポン」の誇りをかけ、自社技術を活かし新たな業界へ参入しようとしている中小企業がある。名古屋に本社を置く株式会社山本工業所(愛知県名古屋市北区西味鋺2−318:社員数/27名:代表者/山本俊樹)である。
元々は2輪車の部品製造をメインに展開していた同社
「世界のトヨタ」のお膝元でもある愛知県。自動車関連の工場はもちろん、いわゆる町工場から大企業まで様々な分野の製造業がしのぎを削る、まさに日本を代表する工業地帯であり、日本トップクラスの技術力を有する地域と言っていいだろう。だがしかし、近年の不況や「トヨタショック」の影響もあり、一時期の勢いは既にないというのが正直な所ではないだろうか。
その愛知県に本社を置く同社。創業は1964年。2輪車に使われる「ショックアブソーバー」という部品の製造をメインに事業を展開し、2輪レースにおいて、ワークスチームへの部品供給を行っていたというぐらいだから、その技術力は押して知るべしであろうか。ただ、このご時世である。「この先どう生き残って行くのか」という逃れられない壁が、同社の前にも立ちはだかっていた。
社長の趣味からスタートした新事業
きっかけは些細な事だった。元々ダイビングと水中写真の撮影を趣味としていた社長の山本氏。ある時、愛用のデジカメ「SIGMA DP2」を既成の水中ハウジングに包み海へ持ち込んだ所、その使用感に非常に不満を感じたという。「これならウチで作ったほうが良い物ができるんじゃないか」という思いから、ほとんど趣味の延長線上で試作品作りをスタートさせた。
新ブランド「アクアパッツァ」を立ち上げ
「SIGMA DP2専用の水中ハウジングを作ろう」。そのプロジェクトはいつの頃からか、社員をも巻き込んだ形となって進んで行った。デジカメの水中ハウジングブランドの立ち上げは同社の新事業となったのである。とはいえ、全くの未知の分野への挑戦で、開発には苦労した点も多かったとか。数々の試行錯誤を乗り越え、アクアパッツァブランド第1号機は完成。2010年4月、待望の発売日を迎える。
同時進行していた第2号機の発表も終えた社長の山本は、現在アクアパッツァブランドのPRのため、アメリカへ飛びダイビングフェアへ参加中だという。
「モノ作り大国ニッポンの危機」と言われて久しいが、こうして新たな挑戦に取り組もうとする意欲的な中小企業がいる限り、日本のモノ作りの未来は明るいのではないだろうか。
アクアパッツァ公式サイト